第10章 愛してる
「愛してる、アリア」
「わたしも愛してます。リヴァイさん」
するりとアリアはリヴァイの腕から抜け、両手を取った。愛しむように優しく握る。
アリアはリヴァイを見た。リヴァイもアリアを見ていた。彼女は微笑んでいた。涙が目の端で光り、鼻の先は寒さで真っ赤になっていた。
「あなたのことを卑怯って言って、ごめんなさい」
「ああ」
「わたしをこの世に引き戻してくれてありがとうございます」
「あぁ」
「わたしに、愛してると言ってくれて、ありがとうございます」
リヴァイはそっと手を伸ばした。アリアの頬に添える。
アリアはその手に頬をすり寄せた。それはごく自然に行われたことだった。
「アリア」
囁く。
月明かりだけが二人を見守っていた。音もなく、どこまでも静かに。
リヴァイは自分の心の奥から湧き上がってきた感情に戸惑っていた。
だがそれを見なかったことにはできなかった。
不思議そうに目で問いかけるアリアに言う。
「キスしてもいいか」
アリアは驚いたように口を開け、そして笑った。
「あなたからのキスなら、喜んで」
眩しいものを見るように、リヴァイは目を細めた。アリアは自分の手を、頬に触れたリヴァイの手に重ね、指を絡めた。
それ以上、言葉はいらなかった。
顔を近づけ目を閉じて。
二人は唇を重ねた。
ほんの一瞬のことだったのに、それは幸福に満ちていた。
「心臓が壊れそうなくらいうるさいです」
「奇遇だな、俺もだ」
アリアとリヴァイは一緒に笑う。額を合わせたまま、互いの瞳を見つめる。それだけで二人には十分だった。
リヴァイはアリアの首筋に手を回し、もう一度キスをしようとした。
「くしゅんっ」
しかしそれを遮ったのはアリアの小さなくしゃみだった。