第10章 愛してる
「リヴァイ、さんが……わたしを?」
アリアは消え入りそうな声で問いかけた。その目は信じられないものを見るかのようにリヴァイを見ていた。
「あぁ」
でも、そんな、うそ
首をゆるく横に振り、アリアは囁く。
何かに怯えるように、掴まれた手を振り解こうとする。
「アリア」
だがリヴァイはそれを許さなかった。
手首を掴み直す。力は強く、簡単には抜け出せない。
ここまできたのだ。何があろうとこの手を離すわけにはいかなかった。
「信じられないのなら何度でも言ってやる」
わかった、と降参するまで何度も。真正面から。そこに嘘偽りなどないことを証明してみせよう。
「アリア、愛してる」
アリアが小さく息を呑む。
「この世の何よりも、誰よりも、愛してる」
「ま、って」
「一緒に紅茶を買いに行ったあの日からだ。あの日からずっと、お前のことが好きだった」
アリアはキツく目を閉じる。
耳を塞ぐことはできない。この言葉を聞かなかったことにはできない。リヴァイがそれを許さない。
「アリア」
「やめて、」
「愛してる」
この想いを告げることはないと思っていた。アリアにとって迷惑だろうと思ったから。いいや、もしかすると自分が臆病だったからかもしれない。伝えるのが怖くて、この気持ちと向き合うのが怖くて、最もらしい理由をつけていただけなのかもしれない。
それでも、怖くても、不安でも、言わなければならなかった。彼女が死にたいと嘆くのなら、死ぬなと止めなければならないのだ。たとえ怒りをぶつけられようとも。罵られようとも。
「俺のために、生きてくれ」
お前が生きていてくれるのなら。それならば、もう、なんだっていいから。
「……リヴァイ、さんは、卑怯です」
「ああ」
「そう言えば、わたしが死ぬのをやめると思ってるんでしょ」
「あぁ、そうだ」
「わたしの気持ちを知ってるから」
「……ああ」