第10章 愛してる
リヴァイはカンテラを掲げ、医務室までの廊下を歩いていた。
夕食を済ませ、書類仕事を少し終わらせて、そして医務室で眠るアリアの様子を見てから寝るのが最近の彼の日課だった。
壁外調査から帰還して一週間。
あれからアリアは高熱を出し、死の一歩手前まで行っていた。今もそのふちにいるのだろう。熱が下がっても彼女は目覚めなかった。意識のない人間に食べさせる食事はすべてが流動食で、体を治すのに必要な栄養が摂れているかと聞かれれば首をひねるしかない。事実、アリアの体は少しずつ痩せていた。
靴の踵が廊下を打つ。
カツン、カツン、という音が小気味良く響いていた。
医務室のドアを開けた。迷いなく、アリアの寝ているベッドに近づく。その周りを囲うカーテンを開けようとして、不意に違和感に気づいた。
人の気配がしない。
いつもならかすかに寝息が聞こえるはずなのに、それがない。
リヴァイは息を呑み、カーテンを開けた。
「……アリア?」
そこに、アリアの姿はなかった。