第10章 愛してる
(リヴァイさん……)
エルマーの口ぶりではきっと無事なのだろう。
死ぬ前に、一目でいいから会いたい。
アリアの意識は今にも深い場所まで沈み込みそうだった。だがここで意識を手放せば、そのまま目覚めることはないだろう。それだけは嫌だ。耐えるんだ。死ぬのは、もう少し後がいい。
「アリア、ちょっと持ち上げるよ。しんどいかもしれないけど我慢してくれ」
ナスヴェッターが心底申し訳なさそうに言って、アリアを横抱きにして持ち上げた。痛みに小さく呻く。
だがこれはこの世に留まっておくために必要な痛みだった。
「グリュック、おいで」
グリュックの鼻息が顔にかかる。湿った鼻面をぐいぐいと押しつけられる。
死ぬな、と言われているようだった。
手を伸ばし、その首を撫でる。血の通った温もりがあった。
朦朧とする意識の中、アリアはグリュックにまたがった。
「グンタさん、しっかり! 助けが来てくれましたよ」
「あ、あぁ、悪い、フローラ」
後ろで青年兵士――グンタを励ますフローラの声が聞こえる。
元々はこの二人を助けるために来たはずだったが、気づけば彼らよりアリアの方が重症だ。
情けないにも程がある。
アリアは自嘲するように薄く笑った。
「……おい、なんだ、この音」
不意に、エルマーが言った。
全員が一斉に黙る。それぞれがじっと聞き耳を立てていた。
「いや、まさかな」
エルマーの声が引きつる。
今にも崩れ落ちそうなのを堪え、エルマーは音の出どころを振り返った。
「頼むから勘弁してくれよ……」
さっきまで微動だにしなかった2体の巨人が動き出したのだ。
どこから現れたのか、新たに5体の巨人を引き連れて。