第10章 愛してる
「エ、エルマーさん!」
現れたのはエルマーだった。
うなじを正確に抉り取られた巨人は地面へ倒れ込む。
エルマーは冷静に周りを見渡した。
地面に放り投げられたアリアは身動き一つしていない。そのそばで座り込んでいるのは新兵か? 残りの巨人は4体。ナスヴェッターの前に立つ2体と、何かを待っているように動かない2体。
「ナスヴェッター! そこを動くな!」
空中に身を投げたまま、アンカーを打ち直す。
奇行種はナスヴェッターと負傷兵に気を引かれているようだった。危険だがやるしかない。うなじを直接狙うのだ。
ワイヤーがギュルギュルと音を立ててエルマーを引っ張っていく。グリップを握りしめ、ブレードを振り上げた。目を開く。巨人はゆっくりとナスヴェッターに向かって手を伸ばしていた。歯を食いしばり、ナスヴェッターは動かない。待つ。エルマーを信じて、待つ。
縦1メートル、横10センチ。
手のひらに筋肉を断つ感覚があった。うなじを削り取った。
エルマーはその場で一回転し、すぐ横にいる巨人に狙いを定めた。1体の不意打ちには成功したが、さすがに2体目は無理だ。巨人の目はエルマーを見ていた。
巨人が振り返ったことによって、アンカーが外れる。エルマーと巨人は真正面から睨み合っていた。
「僕が、やります!」
ナスヴェッターが叫んだ。
今度はエルマーが囮となった。今、ナスヴェッターの前には無防備にうなじがさらされていた。
ナスヴェッターは巨人よりも高く飛び上がり、上からすべてを見下ろしていた。アンカーを1本打ち込む。ガスを最大まで蒸し、自身の身を回転させた。そして、その勢いのままブレードをうなじへ叩き込んだ。