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雨上がりの空をあなたと〈進撃の巨人〉

第3章 正しいと思う方を



 苦い記憶を思い出し、遠い目をしたアリアにエルヴィンは苦笑し、厩舎への扉を押した。

 むわっ、と馬の匂いや牧草の匂いがアリアの鼻をつく。
 しかし訓練兵時代に嗅ぎなれたその匂いに一種の懐かしさを覚えながら、アリアは厩舎の中を見回した。


「馬の首にかかっているのは所有者の名前ですか?」


 大人しく並んでいる馬の首には小さな板がかかっていたり、かかっていない馬もいる。その板には名前が書かれていた。


「あぁ。君にはその板のかかっていない中から選んでもらうことになる。気になる馬がいたら触ってみるといい」

「はい。わかりました」


 と、言ったものの……。

 アリアは難しい顔をして1頭1頭を見て回った。


「さっきの動物に懐かれない話に戻るが……」


 アリアが1頭の馬に手を伸ばしたが、馬は嫌がるように首を振った。それを見ながらエルヴィンが口を開いた。

 彼は自身の純白の毛の馬を優しく撫でている。


「これは勝手な私の君への印象になるが、君はどうも何事にも興味がなさそうに見える」

「興味?」


 裏返った声で聞き返すと、エルヴィンは頷いた。


「動物への興味だけじゃない。そう、言うなら……人への興味もあまりなさそうに思った。訓練兵のときの君と話した第一印象でそう感じた。1枚の壁を感じる、と言ったほうが正しいかな」


 アリアはしばらく考え込み、眉を下げた。

 エルヴィンの言葉に聞き覚えがあったからだ。


「同じようなことを弟に言われました」


 猫を撫でようとして毛を逆立てられ、落ち込むアリアにアルミンは声を躊躇いがちに言った。


『たぶん……姉さんの無関心を動物も感じるんじゃないかな? なんだか、姉さんはぼくやエレン、ミカサとか親しい人には心から接するけど、たとえば近所の人とかこういう動物とかには冷たく接してるんだよ』


 その言葉を聞いたとき、アリアはかなりの衝撃を受けた。
 冷たい態度など取った覚えはないし、愛想を良くしているつもりだ。近所の人とも上手くやれている。



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