第9章 姉さんの隣で海を見たい
もう一度予定表を見て、アリアは内心ため息をついた。
この様子では到底ケーキを食べに行く時間など作れるはずもない。
残念だが二人を誘うのは諦めよう。
「そうだ、二人とも」
だが、それでも何かできないかと考え、アリアは明るい声を出した。
「壁外調査が終わったら、三人でケーキを食べに行かない?」
おそらくあのさつまいもケーキは秋限定のものなのだろう。
壁外調査が終わる頃にはもう冬だ。だがきっと冬限定の何かも出ているに違いない。
アリアの提案に二人は心底嬉しそうに笑った。
「行きたいです!」
「絶対行きます!!」
「じゃあ、死なないように訓練を頑張ること!」
「「はいっ!!」」
さっきまでの半泣きはどこへ行ったのか、と聞きたいほどオルオはやる気に満ち溢れ、ペトラも控えめにだが「頑張ります!」と拳を握っていた。
持っていた予定表を返し、パタパタと訓練場へ向かう二人を見送る。
「うぅん……あとは、誰がいるかなぁ」
アリアは重い足取りでリヴァイの部屋を目指し歩き出した。
もちろんリヴァイという候補が消えたわけではない。だが、ハンジたちのように軽い気持ちで誘える気がどうしてもしなかった。
(まぁ、一人で行ってもいいんだけど)
だがあのケーキは絶対に美味しい。あの美味しさを誰かと共有したくなるに決まっている。
一瞬、アルミンの姿が浮かんだが彼らが寝泊まりしている避難所から喫茶店まではそれなりの距離がある。
それに、農耕作業や訓練兵団への入団のために忙しくしている三人の時間を奪うのは気が引けた。
結局答えが出ないまま、アリアはリヴァイの執務室の前まで来ていた。