第9章 姉さんの隣で海を見たい
それじゃ、と笑うハンジとモブリットに手を振り、アリアは再び歩き出した。
(一緒に行ってくれそうな人……いや、でも壁外調査の一ヶ月前なんだからそんな簡単に誘えないよね……)
次に浮かんだのはエルヴィンだったが、ハンジでさえあれだけ忙しそうだったのだ。団長なら尚更無理だろう。迷惑だけはかけたくない。
だとすると、次は──
「ペトラ、オルオ!」
リヴァイの元へお使いされたものを届けに幹部執務室のある棟を歩いていると、偶然彼女が見つかった。
ペトラの隣にはオルオもいて、なんだか二人ともげっそりとしていた。
「「アリアさん!」」
二人はアリアを見つけると、揃って声を出した。
綺麗にハモリ、ペトラは嫌そうにオルオを見る。オルオもまた、納得のいっていない顔だ。
「ミケ分隊長に呼び出されてたの?」
二人はちょうどミケの執務室から出てきたようだった。
アリアの問いに、ペトラが頷く。
「今度の壁外調査に向けての隊列の話と、訓練の話を」
「アリアさん助けてくださいぃ」
例のお茶会から何かと話すようになったオルオが半泣きで言う。
思わず、と言うようにペトラはオルオの頭を叩いた。
「もうっ! 泣き言言わないの! 恥ずかしいでしょ」
「ふふ、泣き言くらいいくらでも言っていいよ。それで? そんなに訓練が厳しいの?」
オルオが見せてきた書類を受け取り、目を落とす。
そこには一ヶ月後の壁外調査までの予定がびっちりと書き込まれていた。ほとんど一日中外で訓練か、座学だ。
アリアが新兵だった時でもこんなに多くはなかった。
「前回の壁外調査で班から逸れちゃったのが原因でそうなったらしいです」
あぁ、と納得の声が出た。
確かにあの時は危なかった。初めての壁外調査だから仕方のないことだったとしても、あそこから脱せる技能を持っておくに越したことはない。