第9章 姉さんの隣で海を見たい
「アリア!」
声をかけられてアリアは顔を上げた。
ちょうど、兵舎の門をくぐったときだった。
「ハンジ分隊長、モブリットさん!」
何やら大きな布に覆われた大きな何かを一緒に抱えたハンジとモブリットがいた。
ハンジが突然アリアに駆け出したため、モブリットが潰れた悲鳴を上げる。アリアは慌てて近づき、ハンジが手放してしまった荷物を体で受け止めた。(あいにく両手は掃除道具で埋まっていた)
「ハ、ハンジ分隊長、急に走り出すのはやめてください……」
「あ、ありがとう、アリア……」
「あはは、ごめんごめん」
元通りハンジが荷物を持ち直し、アリアもふぅと一息ついた。
「なんだかこうして会うのも久しぶりな気がして、ついね」
「やっぱり分隊が忙しいんですか?」
立ち話をして大丈夫だろうか、とアリアはさりげなくモブリットを見る。しかし彼は困ったような顔をしたものの、特に何も言わなかった。
急ぎではないらしい。
「あぁ。まだ極秘なんだけどね」
ニッと笑ったハンジが身を屈めてアリアの耳に口を寄せた。
「次の壁外調査で巨人捕獲の許可が出たんだ」
「えっ!!」
アリアは目を見開いて素っ頓狂な声を上げた。
えっへん、と誇らしげな顔のハンジの後ろで、モブリットが「言っちゃったか……」と諦めにも似た目で分隊長を見ていた。
極秘のことをこんなにあっさり話していいものか。
「ま、どうせもうすぐ正式に発表されるんだ。あ、それでね、その捕獲には特別作戦班のみんなにも協力してもらう手筈なんだよ」
「えぇ!? そうなんですか!?」
「リヴァイにはもう許可とってあるし。で、今私たちが運んでるのが捕獲用の道具」
新事実がポンポン飛び出すことに唖然としながら、アリアの目は布で覆われているそれに向いた。
めくってみても? と問いかけると、ハンジは笑って頷いた。