• テキストサイズ

雨上がりの空をあなたと〈進撃の巨人〉

第8章 これから恋敵



 アリアの手が伸びて、髪飾りに触れる。
 髪飾りの贈り主を想っているのか、アリアは目を伏せた。


「おなじ、女性だった。あの人は、ずっとわたしを想っていてくれていた。墓場まで持って行くつもりだったって言われた。わたしを、困らせたくないからって」

「……でも、その人の気持ちをアリアさんは知っている」

「うん。告白、されたの。わたしにほかに好きな人がいるって気づいていて、でもやっぱり、伝えなきゃって思ってくれたのかもしれない」


 長いまつ毛がかすかに震えた。
 涙をこらえているように、見えた。


「だれを好きになろうと、だれに想いを告げようと、それは自由だよ。なんにも悪いことじゃない。だから」


 ついにペトラの数歩前で、アリアの足が止まった。
 遠くの夕焼けを背負って、彼女はペトラを振り返る。


「恋しちゃダメ、なんて言わないで」


 そんなこと言ったら、カミラさんに怒られちゃう。

 冗談めかして付け加えられた一言で、ペトラはようやく髪飾りの贈り主の名前を知った。


「……アリアさんの、好きな人ってだれなんですか?」

「ん〜……だれにも言っちゃダメだからね」


 ペトラの問いかけに、アリアは笑う。
 その笑顔にペトラも思わず笑い返していた。

 あの人が好きだと言っていいんだ。
 当たり前のことのはずなのに、それはずっと悪いこととしてペトラの心を締めつけていた。
 これからは、胸を張って――



 
「リヴァイ兵長」




 好きだと言えるはずだったのに。


/ 454ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp