第8章 これから恋敵
アリアは瞬きをして、涙を払う。
「エルマーさんから何か聞いた?」
その聞き方は確信しているものだった。
ペトラは思わず口を閉じた。知らず知らずのうちに泳いでいた目は答えを物語っているようなものだ。
「えっと、はい。数ヶ月前、同じ班員だった方を病気で亡くされた、と」
ごまかしなどできるはずもない。
ペトラは再び視線を落として素直に頷いた。
「やっぱり。他には?」
「えぇっと、それで……その、アリアさんの友人になってほしいって」
改めて口に出すと恥ずかしい言葉だ。
恐る恐る言うと、かすかにアリアが笑う気配がした。ちらりと見上げると、彼女はなんとも言えない表情で口元を曲げていた。
「そっか。気を使わせちゃってたんだね」
困ったように頭をかき、アリアはペトラを見下ろした。
「わたしも、友だちがほしかったの。ねぇ、ペトラさえ良ければわたしの友だちになってくれない?」
ペトラは目を見開いた。
はにかむように言って、笑うアリアが突然幼く見えたのだ。自分とそう歳の変わらない少女に。
「私なんかで良ければ……!」
そのことに驚き、しかし当然のことになぜ気づけなかったのだろうかと思いながら、ペトラはすぐに頷いた。即答だった。
アリアは心底嬉しそうに目を細めた。