第7章 愛情は生きている
「言わなきゃだめ?」
「教えてください。悩み事があるなら聞かせてください。解決はできなくても何か力になれることがあるかもしれない」
カミラは両膝を立て、その間に顔を埋めた。
「──あたし、もうすぐ死ぬんだ」
「え?」
一瞬、頭が真っ白になった。言葉を理解するのに時間がかかって、たったそれだけしか返事ができなかった。
カミラはアリアの反応をわかっていたかのように笑う。
「生まれつき心臓に病気があって、この歳まで生きて兵士をやれてるのも奇跡に近いんだって。でもやっぱり、もうだめらしい。医者に言われてたんだ。今さら兵士を辞めたとしてもそう長くは生きられないって」
はは、と乾いた笑いを上げる。アリアは口を開けたまま微動だにしなかった。何度聞いてもカミラが死ぬという事実が理解できなかった。いや、理解はしていたが受け入れられなかった。
「だから明日には実家に帰る。実家で、死ぬまで静かに暮らすよ。今日はそのことを考えていて、それと心臓の痛みで倒れた」
簡潔に、事実だけをカミラは述べていく。アリアを置いてけぼりにして、淡々と。話す。話し続ける。
「アリアには知られたくなかった。余計な心配かけると思ったし。最近よそよそしかったのもバレないようにって思って。あと、アリアといると死ぬのが怖くなるからさ」
「もうすぐ死ぬのはなんとなくわかってたし、まさかこんなに早く来るとは思ってなかったけど」
「でも最後の最後でバレちゃうんだなぁ。あたし、やっぱり隠し事が下手なのかも」
「黙ってて悪かった! 本当にごめん。でももうどうしようもないことだから」
「それでさ、この前アリアからの誕生日プレゼントでバレッタもらったじゃん。あたしが火葬される時、あれと一緒に燃やしてほしいって思ってるんだけど……やっぱだめかな?」
「……アリア? なんか喋ってよ」
「アリア」
「アリア」
「ねぇ」
「泣かないで」
何かが目から滑り落ちて、頬を濡らした。ぱたぱたと音を立てて足元に落ちる。情けなく開いた口の中に、しょっぱいそれが入ってきた。