第7章 愛情は生きている
無理しすぎたみたい。
そう聞いて「そうなんだ。それだけならよかった」なんて笑い飛ばせるほどアリアは能天気ではなかった。
カミラは自分の限界を知っている人だ。どこまでいったら体が使えなくなるのかを知っている人だ。そんな人が訓練のしすぎで倒れるなんて。
「……何か隠してるんじゃないんですか」
刺々しい声だった。
隠し事をされたことに怒っているわけじゃない。どんな人にだって言いたくないことくらいある。訓練で倒れたことに怒っているわけでもない。いつもと調子が違って、ついうっかりキャパオーバーしてしまっただけかもしれない。
じゃあ何に? 何に、こんなに怒っているんだろうか。
「隠し事? そんなのしてないよ」
「じゃあ、どうして」
この人のことを全て理解しているわけではない。
カミラはアリアにとって頼りになる先輩で、友人で、戦友で、初めて愛を告げてくれた人だった。
「どうして、そんなに泣きそうな顔してるんですか」
アリアもまた、カミラのことを大切に想っている。
それはカミラがアリアに望んでいる感情ではない。だがそれでも、アリアはカミラの力になりたかった。何かに悩んでいるのなら話を聞きたかった。いつも頼りっぱなしだから、少しでも頼りにされたかった。
それがカミラにとってどれだけ残酷なことだとしても。
アリアはそれに気づいていないのだから。
「……勘弁してよ」
絞り出すような声。必死に吊り上げられた口角は震え、目のふちに涙が溜まる。
「この前一緒に出かけた時からカミラさん、急によそよそしくなったじゃないですか」「やめて。違うんだ」「やっぱり、わたしのせいですか?」「お願い、もう」「わたしが、カミラさんの想いに応えられなかったから、」「もうやめて!!」
カミラは叫んだ。頭を抱え、髪をぐしゃぐしゃにして叫んだ。
沈黙が二人の間に落ちる。
しばらく互いに一言も発しなかった。視界の端に、細やかな埃が舞っていた。
「あんたにあの時愛してると言ったのは、玉砕覚悟だった。振られるつもりで言ったんだ。自分の気持ちを言って、スッキリしようって。だからそれが原因じゃない」
「……じゃあどうして、訓練中に倒れたりしたんですか?」