第7章 愛情は生きている
「と、言うわけですよ、兵長」
「何がと、言うわけだ。何一つとしてわからねぇが?」
兵舎に戻り、アリアと別れた後カミラは真っ直ぐにリヴァイの部屋を訪れていた。ちょうど少し早めの夕飯へ行こうとしていたリヴァイを引き止め、事細かに今日の出来事を話す。
アリアとのお誕生日デートがどれだけ楽しかったかを、しっっかりと語った。当然リヴァイはものすごく迷惑そうな顔をしていたが。
「羨ましいでしょ?」
もちろんアリアがリヴァイに抱いている想いについては一言も漏らしていない。そう約束したからだ。
律儀にも最後まで話を聞いてくれたリヴァイは、カミラの放った一言に眉間の皺をさらに深くした。
「何がだ」
「あたしが今日一日アリアとお出かけしたことが、です。プレゼントまで貰っちゃったんですよ」
「誕生日なんだからプレゼントくらい用意するだろ」
「素直に羨ましがればいいのに」
いまいちピンときていない様子のリヴァイに、当てつけのようにため息をこぼしてやる。
「うかうかしてたらアリアが他の人のものになっちゃいますよ?」
そろそろ切り上げようと、椅子から立ち上がりかけたリヴァイはそのままの体勢で動きを止めた。
鋭い三白眼がカミラを射抜く。その反応だけで、あぁ、やっぱり自分の勘は当たっていたのだとわかった。
「だって兵長。アリアのこと好きなんでしょう?」
「……なぜそう思う」
「女の勘ってやつですね。そういうのに鋭いんですよ、あたし」
へらっと笑って言う。
いつから、と聞かれれば答えられないが、それでもリヴァイのアリアに向ける視線の、声の、空気の柔らかさは分かり易すぎた。
リヴァイは口を閉じ、じっとカミラを見つめた。
「……あたしの命は、長くありません」
夕日の沈んだ執務室。唯一の光は机の上に灯っている蝋燭だけ。
リヴァイは表情を変えなかった。
「あぁ。一度、聞いた」
「本当はあたしがアリアのそばにいられたらいいんですけど、それは絶対にできない。だから」
カミラは震える声で言った。
「アリアのこと、泣かせたら承知しませんよ」
リヴァイは口を開け、閉じ、まぶたを伏せた。
「あぁ」