第7章 愛情は生きている
「それはあんたが悩む問題じゃあない」
言いながら、カミラは心の中で自嘲した。これではアリアの恋を応援しているようなものじゃないか。今、たった今、あたしは目の前の彼女に振られたと言うのに。
アリアは不思議そうに首を傾ける。
「好きな人一人守れないあっちの責任だ」
「そ、そんなこと」
「いいや、そんなことある。兵長とは短い付き合いだけど、あの人があんたの気持ちに応えようとなったその時は、向こうもあんたの存在丸ごと抱えようと決心した時だ。あの人は中途半端な人じゃないからね」
それに、と語気を強めて続ける。
「自分の想いを迷惑だなんて考えるな。少なくとも、あんたの目の前にあんたからの愛を喉から手が出るほど欲している人間がいるんだ」
「……カミラさん」
謝ろうとしたその口を、カミラは右手で覆う。
この恋が叶うはずがないとわかっていたから。だから、謝罪なんて聞きたくなかった。
「だからまぁ、何が言いたいかと言うとね」
手を離し、背もたれに背を預ける。
「立場とか遠慮とかで好きを諦めるなってことさ。当たって砕けろ。どうせ死にゃしないんだから」
メープルシロップのついたフォークを振り、アリアを指す。ニッと笑って言えば、アリアもまた弱々しく微笑み返した。
「あたしとの約束だ。いいね?」
「はい」
は〜あ、とわざと声に出す。出して、ちらりとアリアの反応を見て、また笑った。
「でも、リヴァイ兵長に告白するのはあたしが死んでからにしてね」
「死んでからって、そんなのおばあちゃんになっちゃいますよ」
「ハハッ、そうかもね」
最後の一口を食べ終えてフォークとナイフを皿に置いた。