第7章 愛情は生きている
涙を拭い、すんと鼻をすする。
アリアは何も言わなかった。ただ黙ってカミラを見つめているだけ。
「……アリアは、リヴァイ兵長が好きなんだっけ」
紅茶に手を伸ばす。なんとなく言うと、そこでアリアの表情が大きく崩れた。
目を見開き、肩が跳ねる。湿っぽい空気が一気に吹き飛ぶのを感じた。
「なん、なんで、それ、そそそそれを」
壊れた蓄音機のようにどもるアリアに、カミラは笑った。
逆にどうして気づかれないと思ったのか聞きたいくらいだ。
「あれで気づかないのは余程の鈍感だな。アリアを見ていたらわかる」
恋をする人間なら誰だってわかる。
露骨に態度に出ているわけではないし、アリアはちゃんとリヴァイとは上官として接している。その中に、滲む恋慕の情があるのだ。
「ど、どうか内密に。特に兵長本人には……」
「あぁ。もちろん」
「頑張って隠してるつもりなんですけど……やっぱりわかっちゃうものなんですね」
「どこに隠す必要があるんだ?」
困ったようにアリアはため息をつく。
パンケーキを頬張る。バターとメイプルシロップがたっぷり染み込んだそれは、すっかり冷めていた。
カミラの問いに、アリアは「だって」と目を伏せた。
「迷惑でしょう?」
一瞬、喉が痙攣した。
「……何が?」
思っていたよりもずっと低い声に、アリアはちょっとびっくりしたようにカミラを見た。
「万が一にもありえないとは思ってますけど、もし、もしも、わたしの気持ちにリヴァイさんが応えてくれたとして、わたしはあの人の足枷にはなりたくないんです。わたしの存在が彼の判断を鈍らすことになったら、と思うと……」
うつむき、ポソポソを言う。カミラは思わず大きなため息を吐き出した。
まったく、何に悩んでいるのかと思ったら……。
「アリア、それは違う」