第7章 愛情は生きている
流行りの服を見て、美味しい昼食を食べて、繊細な装飾が施されたアクセサリーを眺めて。
美味しいね、綺麗だね、と笑い合う。あぁ、なんて。なんて、幸せなのだろうか。
太陽が傾き始めたころ。カミラとアリアは喫茶店にいた。
この喫茶店名物だというパンケーキを待つ間、先に届いた紅茶を飲む。
アリアは店内を見回しながら、懐かしそうに目を細めた。
「……この喫茶店」
ぽつ、とアリアが言葉をこぼす。
「親友と、来たことがあるんです」
楽しい思い出のはずなのに、アリアの顔は寂しそうだった。それだけでその親友が今どこにいるのか、わかってしまった。
カミラはなんと答えればいいのか迷い、また紅茶を飲んだ。
この店を選んだのはカミラだ。嫌な気持ちにさせてしまったかもしれない、と気分が落ち込む。
「だから、今までちょっと行きづらかったんですけど、今日カミラさんと来られてよかったです」
だが、アリアは笑って言った。
ありがとうございます、と。懐かしさと寂しさをすべて飲み込んだ目で笑っていた。
「……あ、たしは、なにもしてないよ」
「ここを選んでくれたじゃないですか」
「偶然だ」
「その偶然を選んだのはカミラさんです」
口を開いたカミラの言葉は、ちょうど届いたパンケーキによって遮られてしまった。
美味しそう、と言ってから、アリアはカバンに手を入れた。
「カミラさんに渡そうと思ってたものがあって……」
ナイフとフォークを手にしたカミラは、その格好のまま動きを止める。アリアはカバンの中から小綺麗な包みを取り出した。
「誕生日プレゼントです」
慌てて両手を開けて、そっとそれを受け取る。手のひらサイズだ。
「開けてもいい?」
「はい。どうぞ」
優しく促され、カミラは包みを開いた。
「これは……」
そこにあったのは、美しいバレッタだった。