第7章 愛情は生きている
「君たちが例の精鋭か!」
「噂には聞いていたよ! 巨人を20体以上殺したんだって?」
「おぉ。なんと麗しい! 兵士でなければ私の嫁にと言っていたよ」
「まぁ、素敵な方。それでいて強いだなんて」
「素晴らしいなぁ。少し話ができるかい? 資金援助の件、考えてもいい」
会場に着いた瞬間からこれだ。
馬車から降り、ホールへと入ると瞬く間に大勢の貴族に囲まれた。
ゴテゴテと飾り立てた貴婦人のドレスがランプに反射し、目潰しかの如くアリアの目を狙ってくる。嗅ぎ慣れない上、いろんな匂いの混ざった香水は容赦なくアリアから酸素を奪っていった。
それだけならまだマシだが、貴族とは当然女性だけではない。
値踏みするような目線が体を這っている気がして、気持ち悪すぎる。
さりげなくエルヴィンが貴族とアリアの間に壁のように立ってくれたおかげで少しは息ができるようになったが……。
リヴァイさんは、と見渡すと、彼はすでに貴婦人の波に揉まれていた。
こんなところで小柄の弊害が出てくるなんて!
リヴァイのつむじが出てきたり隠れたりを繰り返している。あれが巨人の群れならば一瞬で蹴散らしていただろうが相手は人間だ。しかも女性で貴族。
いくらなんでもできないだろう。
「アリア」
肩に手を置かれ、エルヴィンが耳元に顔を寄せる。
「私はここをしばらく離れる」
「えっ」
「大丈夫。あらかたの貴族の皆さんは私が連れて行く。君は広間の端っこで待っていてくれ。無理に話す必要はないから」
「リヴァイさんは……?」
「あいつは……まぁ、なんとかなるだろう。縁談とかを急に申し込まれるかもしれないが、無視するんだよ」
「は、はい。わかりました」
貴婦人はリヴァイに夢中だし、領主の方々もエルヴィンの話術によってアリアから意識が逸れている。
エルヴィンの申し出をありがたく受け、アリアは誰にも気づかれないように貴族の群れから出た。