第7章 愛情は生きている
「お、間に合ったな」
「わぁ……すごい似合ってるよ、アリア」
エルヴィンに礼を言い、アリアは手を離す。
聞こえてきた声に顔を上げれば訓練終わりのエルマーとナスヴェッターがいた。
「ありがとうございます。エルマーさん、ナスヴェッターさん。この髪の毛をやってくれたのもドレスを選んでくれたのもカミラさんなんです! ね、カミラさん──」
さっきまでそばにいたカミラを振り返ったが、彼女の姿はどこにもない。
アリアはぽかんと口を開けた。何か用事でもあったのだろうか。
「アリア」
リヴァイの声に慌てて前を向く。
エルヴィンは少し離れたところでその様子を微笑ましく見ていた。
「どうですか? 似合ってますか?」
アリアはニコッと笑ってその場で一回転する。
ちらりとリヴァイを見上げれば、彼は意を決したように口を開いた。
「三人とも〜! 馬車の用意ができたよ!」
リヴァイが何か言おうとした瞬間、馬車の手配をしていたハンジが玄関ホールを覗いた。ハンジの声にびく、と肩を揺らしたリヴァイはアリアから顔を背けてしまった。
「……あ、なんかごめん」
「相変わらず間が悪いな」
何かを察したハンジがこそっと謝る。声を立てて笑いながらエルヴィンが言った。
「んだよ、リヴァイ。奥手だなァ?」
「……うるせぇ」
「アリア、気をつけてね。嫌なこととかされたら貴族相手でも殴るんだよ?」
「さ、流石に殴るまではしませんよ」
悪くない、の一言でももらえれば嬉しかったのだが。
そううまくはいかないらしい。
アリアはちょっと肩を下げ、すぐに切り替えた。
ハンジに促されるまま、アリアたちは馬車に乗り込んだ。
目指すは王都である。