第6章 お前が雨に怯えるのなら
リヴァイが答えてくれるまでここを動かない、と意思を込めて彼を見る。
リヴァイはしばらく考えていたが、やがてふいっと前を向いてしまった。
「さぁな」
スタスタと歩き出す。小さな背中を見ながら、アリアは「えぇっ!?」と声を出した。
小走りでリヴァイに追いつき、抗議する。
「ここまで引っ張ってそれはずるいです! なんで教えてくれないんですか!?」
「うるせぇ」
「あ、すみません。じゃ、なくて!」
「部屋についたぞ」
タイムオーバーだ。
ふんぬぬ、と納得のいっていないアリアの顔を見て、リヴァイは微かに口角を上げた。
「いつか教えてやる」
「本当ですか!? というか、いつかっていったい……」
「俺の心が決まったらだ」
「心……?」
リヴァイの言いたいことがわからず、アリアは思わず首を傾げた。
リヴァイは目元を緩め、くるりとアリアに背を向けた。来た道を戻っていく。彼も、もう自室に戻るのだろう。
「リヴァイさん」
その背中に呼びかける。
足が止まり、ゆっくりと振り返った。
「送ってくださりありがとうございます」
ペコリと頭を下げた。リヴァイは何度か瞬きを繰り返し、片手を上げただけだった。
闇に姿が飲み込まれていく。
ついに見えなくなるまで、アリアはその場から動かなかった。
(強くなろう)
心の中で決意を固める。
リヴァイに安心してもらえるように。誰の力も借りず、戦えるようになろう。
大きなあくびを一つして、アリアは自室のドアを開けた。