第6章 お前が雨に怯えるのなら
「……でも」
だが、疑問が残るのだ。
「どれだけ鍛えても限界というものがあります。壁外に出たら予想もしていなかったことが起こり、呆気なく死んでしまうかもしれません。そのリスクが、特別作戦班は他よりも高い」
もしかしたら陣形の崩壊を防ぐよう命じられるかもしれない。
もしかしたら、その時アリアは一人で戦わなければならないかもしれない。そうなれば、いくら訓練を積んでも巨人との戦闘においては経験の浅いアリアはあっという間に食われてしまう。かもしれない。
「調査兵団にはわたしなんかより強い人がたくさんいて、たくさん壁外での経験を積んだ人がたくさんいるはずです。なのに、なぜ……」
アリアは拳を握りしめ、リヴァイを見つめた。
「なぜリヴァイさんはわたしを選んだんですか?」
何か別の理由があるのでは?
エルマーと話して、その疑問がずっと頭の中を回っていた。
リヴァイは口を閉じたままだった。
何かを言おうとして目を泳がせ、ふっと伏せる。
「……やっぱり、何か別の理由があるんですね。言いづらい理由が」
言いながら、心臓を抉られたような気分になった。
巨人の囮要員だろうか。結局、リヴァイはアリアを信じてはいなかった。アリアがこれからもっと強くなろうと心に決めていたことも、アリアがどれだけこの班に選ばれて嬉しかったのかも、彼は考えていなかったんだ。
思考がマイナスへと転がり落ちていく。
涙が滲んで、慌てて瞬きをした。
「俺がお前を選んだのは、」
リヴァイがポツリと言った。
「私情だ」