第6章 お前が雨に怯えるのなら
「アリア〜! どうだい新しい班は? 私は仕事が多過ぎて潰れそうだよ! あ、そうだ。今からお茶会でもしない?」
「ハンジ分隊長! お茶会はダメです! 昨日締め切りの書類やってないの忘れたんですか!?」
「あの、よければ手伝いましょうか?」
「え、いいの!? さすがアリア!」
「ありがとう、アリア」
「いえ! ちょうど暇してたんです」
話すタイミングなど、いつでもある。
まだまだ焦らなくても大丈夫。
「アリア、私も昼食を共にしてもいいかい?」
「エルヴィン分隊長! あ、いや、団長、とお呼びすべきですよね」
「まだ団長になったことは正式には発表していないから、好きなように呼んでくれて構わないよ」
「ありがとうございます。お昼ご飯、一緒に食べましょう!」
「ありがとう。向かい、失礼するよ」
「……分隊長、顔色が優れませんがちゃんと寝てますか?」
「あぁ、わかるかい? 疲れが溜まってるみたいだ」
「また美味しい紅茶を手に入れたので持っていきますよ!」
「それは嬉しいな。楽しみにしてるよ。ふふ、リヴァイと選んだ紅茶かな?」
「んん、なんですか、その言い方」
大丈夫。次がある。
今度は訓練の終わりぎわ、そうだ。シャワー室で声をかけよう! そうすれば、きっと。
「アリア、お疲れ様!」
「ニファさん! お疲れ様です。ニファさんも訓練終わりですか?」
「うん、そうだよ。部屋でダラダラしたいけど、ハンジさんのお手伝いしなきゃいけないんだ……」
「昨日も書類仕事に追われてましたけど、そんなにたくさんあるんですか?」
「ううん。ハンジさんが書類そっちのけで巨人の研究続けてるから、どんどん溜まってくの」
「ひえ……お疲れ様です」
「ま、そんなハンジさんでもやる時はやってくれるから!」
「ハンジさん、かっこいいですよね!」
「そう! うちの分隊長はすごいかっこいいの!」
非番の日もだめ。
お昼の食堂もだめ。
訓練終わりのシャワー室もだめ。
カミラは絶望していた。
あの日、アリアと話をしようと決意したあの日から、もう一週間は経った。それなのに、カミラはまだ一度もアリアと話せていなかった。