第6章 お前が雨に怯えるのなら
声にならないざわめきが部屋の中に満ちた。
だがリヴァイの強さや働きを考えると、特別作戦班というのもおかしなものではなかった。
「そこでリヴァイを兵士長として任命する。班のメンバーはお前が直々に選べ」
「あぁ。もう考えている」
リヴァイの返事にキースは頷く。
怒涛の展開についていけているのはこの部屋に、リヴァイとエルヴィンしかいなかった。だれもが落ち着きをなくし、思うところがあるように口を閉じている。
「ハンジ、ミケ、お前たちは分隊長となる」
「え、ぶ、分隊長!? 私が!?」
「あぁ。分隊のメンバーは変えなくてもいい。まぁ、お前を制御できるのはモブリットくらいしかいないだろうしな」
目を見開き驚くハンジとは対照的に、ミケは黙ったまま頷くだけだった。
薄々こうなることは予想していたのかもしれない。
「このタイミングで団長を退くこと、申し訳なく思う」
重々しくキースは言った。
その顔には疲れが滲んでいて、常に彼に感じていた覇気がなかった。きっと、悩んで悩んで悩んだ末の結論だったのだろう。
「だが人類はこれから新たな局面を迎えようとしている。その局面は私ではなくエルヴィンでなければ乗り越えられない。そう、判断した」
おもむろに立ち上がり、深く、深く、頭を下げた。
「今まで私について来てくれてありがとう。お前たちの武運を、祈っている」