第3章 正しいと思う方を
「入団式!? アリアは調査兵団に入るんだろ?」
入団式、という言葉に反応したエレンが興奮したように拳を握る。
アルミンの影響で外の世界に憧れるエレンは調査兵団にも憧れている。知り合いが調査兵団というだけでワクワクするのだろう。
「調査兵団に入っても帰って来れる?」
アリアの服の裾を握り、アルミンは躊躇いがちに聞いた。
両親はアリアが小さいころに事故死した。アリアとアルミンの親代わりになってくれたのは祖父だ。しかし、いくら祖父がいたとしても、アルミンも寂しいものは寂しい。今ではアリアが母親代わりにもなっていた。
アリアは微笑み、アルミンの頭を撫でた。
「もちろん! 休暇には絶対帰って来るよ。約束する」
「アリア! 調査兵団のマント着て来いよ!」
「アリア、カルラおばさんもグリシャおじさんもアリアに会いたいって言ってた」
「ぼく、姉さんに話したいことがたくさんあるんだ!」
わちゃわちゃと喋り出す3人にアリアは苦笑する。
なんだか雛鳥に餌を集られているような気分だ。
「よーし! 今日は姉さんはみんなのものです! なんでもしちゃうよ!」
「ほんと? やった!」
「じゃあまずは俺の家だ! そんで、訓練のこととか聞かせてくれ!」
「アリアの作ったシチューも食べたい」
「任せなさい!」
親指を力強くあげ、アリアはそばにいた馬の手綱を引いた。大人しく鼻を鳴らし、近寄ってきた馬にエレンたちはちょっと驚いたように身を引く。
「じゃあ最初はエレンの家ね!」
「わぁっ!」
アリアはアルミン、エレン、ミカサの順に抱き上げ、馬の上に乗せた。突然視界が高くなったことにびっくりしたのか、3人はしばらく固まっていた。
「ゆっくり歩くから大丈夫だよ」
馬の尻を軽く叩くと、3人を乗せて緩やかに歩き出した。