第3章 正しいと思う方を
「アルミン、なにそわそわしてんだよ」
その日、アルミンはなにをするにも上の空で落ち着きがなかった。それに真っ先に気づいたのはアルミンの友人のエレンだ。
川へ降りられる階段に腰掛けるエレンとミカサはアルミンを見た。
「じ、実はね、今日姉さんが帰って来るんだ」
「アリアが!?」
「何時くらいに帰って来るの?」
アルミンの言葉にエレンが目を輝かせ、ミカサもパッと顔を明るくさせた。
幼いころから遊び相手になってくれたり、3人の知らないことをたくさん教えてくれたアリアはエレンとミカサにとって姉と言っても過言ではなかった。
アルミンはポケットからアリアから送られた手紙を取り出し、2人に見せる。
「今日って書いてあるだけで何時ごろかはわからないけど、とにかく帰ってきてシチューを作ってくれるって!」
「いいなぁ! アリアのシチューって美味いんだよな」
「うん。アリアは本当に料理が上手」
姉が褒められて嬉しいのか、アルミンは顔をほころばせる。
「アルミン! エレンにミカサも! 久しぶりだね~!」
そのとき、3人の後ろから声が聞こえた。
この聞き覚えのある声は間違いなくアリアのものだ。
3人は一斉に後ろを振り返った。
「元気だった?」
「姉さん!」
「アリア!」
兵団服ではなく、私服をまとったアリアは乗っていた馬から降り、駆けてきたアルミンを抱きしめた。
「ちょっと見ない間におっきくなったね、3人とも!」
アルミンを離し、エレンとミカサにもハグをする。
いつもなら嫌がるエレンだったが、よほど嬉しいのか抱きしめ返してくれた。ミカサも照れくさそうにすりっと頬を寄せた。
「今来たところ? 今日泊まるの?」
「今着いたばかりだよ。……ごめんね、夜には入団式があって帰らないといけないからお泊まりはできないの」
アリアが眉を下げると、アルミンは一瞬悲しそうな顔をした。心が痛む。