第6章 お前が雨に怯えるのなら
フードを深く被り、グリュックに乗る。
結局、リヴァイとは会えなかった。向こうも忙しそうにしており、アリアも片付けや準備に時間を取られて話しかけることができなかったのだ。
せめて一言だけでも礼を言えたらよかったのだが。
まぁ、仕方がない。
「今日もよろしくね、グリュック」
軽くグリュックの首を叩くと、彼は「任せろ」とでも言いたげに鼻を鳴らした。
今日の夕方にはトロスト区に帰還する予定だ。それまで頑張らなければ。
気合いを入れるようにアリアは表情を引き締めた。
「出発するぞ!!」
前方からキースの声が聞こえる。
蹄が地面を叩く音が辺りに響き渡った。
「訓練通り5つにわかれろ!」
場所は巨大樹の森。天候は最悪。フードの隙間からアリアは木々の間を歩く巨人を見た。
俯き、ゆっくりと歩く巨人。うなじはガラ空きだ。あの巨人を倒し、この場所を次の拠点とする。
キースの掛け声と同時にそれぞれが動き出す。
アリアはエルヴィンの背中を追った。
「囮は我々が引き受ける! 全攻撃班、立体機動に移れ!」
隣でナスヴェッターがブレードを抜く。
グリュックの鞍の上に立ち上がり、アリアはアンカーを近くの木に刺し飛翔した。
「全方向から同時に叩く!」
エルヴィンの声が雨音の合間に聞こえる。
アリアとナスヴェッターは顔を見合わせ、互いに頷いた。アンカーを木から巨人の右足に刺し直す。
重心を前に動かすと、それに倣ってアリアの上半身は頭から前方へ傾いた。視界の端でナスヴェッターも同じように動いた。
ギュルルッと音を立ててワイヤーが巻き取られる。握りしめられたブレードが迷いなく巨人のアキレス腱を切り落とした。
右足と左足。両方のアキレス腱を損傷した巨人はその場に崩れ落ちた。
「人類の力を──」
うなじに真っ先に到達したのは男の兵士。名はたしか……モーゼスだ。
地面を転がったアリアはその姿を見た。確実にうなじを狙っている。あのまま行けば、きっと
「思い知れ!!」
刹那、巨人の首があり得ない速さで動き、モーゼスを食った。
ドサッ、
呆然とするアリアの目の前に彼の右腕が落ちてきた。