第3章 正しいと思う方を
「やっと卒団したわね!」
解散式のあと、少し遅めの夕食を食べていたオリヴィアが肉を頬張りながら言った。
オレンジジュースでパンを流し込んだアリアはその言葉に頷き、笑う。
「ほんとに長かったよ……。わたしたちよくここまで残れたよね」
オリヴィアは訓練中のことを思い出し、苦い顔になった。
彼女は何度も何度も教官に泣かされ、立体機動の訓練で怪我をたくさんしていたのだ。アリアに「もう嫌だ。逃げたい」と喚いていたのもすでに懐かしい。
「お疲れ様、オリヴィア」
「ありがと。もちろんアリアもね。アリアはやっぱり首席だったわね! あたしの目に狂いはなかったわ!」
「オリヴィアも成績上位者に入るなんて思わなかったけどね。まさか5位になるなんて」
「ちょっとあたしのことバカにしてる?」
「してないしてない。でもあんなに泣いてたオリヴィアが――」
「その話はしないで! 恥ずかしいの……」
ぶんぶんと大きく手を振るオリヴィアにアリアは声を出して笑った。
「話を変えましょ! アリアは明日の午前中、実家に帰るの?」
明日の午前中は休暇をとっていた。その日の夜は入団式のため、それまでに戻って来なければならないが、アリアは弟のアルミンと祖父の元へ帰ろうと思っていた。
「うん。手紙にも帰るって書いたし。オリヴィアは?」
「あたしは久しぶりに友だちと買い物に行こうと思っているの!」
訓練兵団に入っていてもわずかだが給料がもらえる。しかし使う時間がないためどんどん貯まってしまう。
どうやらオリヴィアはそれらすべてを買い物に使うらしい。
「豪遊してやるわ!」
「ふふっ、お土産期待してるからね」
「任せなさい!」
その夜、アリアとオリヴィアは明日の休暇について話し込み、結局ベッドに潜り込んだのは日付を越えたころだった。