• テキストサイズ

雨上がりの空をあなたと〈進撃の巨人〉

第4章 自分の大切な人を心配させないように



 リヴァイの目が見開かれ、やがて静かに緩んだ。


(笑っ……た、のかな!?)


 笑顔のようなそうでないような。しかし優しげな表情を浮かべた彼は一つ頷き、医務室のドアを開けた。


「……なにしてる」


 ボソ、とリヴァイがドアの向こうにいたらしい人物に言った。
 ここからではリヴァイの背中しか見えない。頑張って首を伸ばすと、リヴァイの肩越しにモサモサ頭が見えた。


「ナスヴェッターさんですか?」


 名前を呼べば、モサモサ頭が揺れた。


「さっさと行け」


 リヴァイが動き、ナスヴェッターの姿がようやく見える。


「で、でも」


 なにやらモゴモゴするナスヴェッターの背中をリヴァイは押した。
 ひょろっと長い手足を泳がし、ナスヴェッターは医務室に足を踏み入れた。リヴァイはため息ともつかぬ息を吐き出し、ドアを閉めた。


「ナスヴェッターさん?」


 出入り口のそばから動かず、俯くナスヴェッターに声をかける。


「怪我はないとお聞きしたのですが……大丈夫でしたか?」


 アリアの心配するような声音にナスヴェッターの肩が揺れた。
 まるで怒られることを覚悟しているような子どものように、背を丸め、拳を握りしめている。


「どこか具合でも悪いんですか?」


 俯いてしまっては表情が見えない。
 ナスヴェッターの気持ちをわかりたくて、アリアが続けて言う。


「…………いいや、怪我は、ない。体調も、悪くない」


 ふるふるとナスヴェッターは首を横に振った。
 彼に被害が及んでいないことを本人の口から聞くことができ、アリアは安堵の息を吐いた。


「よかった」


 心の底から言った一言に、ナスヴェッターは一歩下がった。
 とん、と背中がドアに当たる。


「僕は、」


 か細い声が聞こえた。


「ぼくは」


 ドアに体重を預け、ナスヴェッターはそのままずるずると座り込んだ。
 目元を手で覆い、涙で声が震えていた。


「あのとき、死ぬべきだったんだ」


/ 454ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp