第4章 自分の大切な人を心配させないように
リヴァイはどこから話そうか、と考えるような素振りを見せた後、唇を湿した。
「中庭でお前を見つけた後、キースとエルヴィンにハンジが報告しに行った。その間、俺はナスヴェッターのところに行ってちょうど居合わせたベインとオトギを……捕まえた」
「ナスヴェッターさんは無事でしたか?」
医務室を見渡しながら聞くと、彼は「あぁ」と頷いた。
「ギリギリのところだったが、まぁ怪我はなかった」
ほっ、と安堵の息を吐く。
ずっと気にかかっていたことがなくなり、心がずいぶん軽くなった。
「ベインとオトギは問答無用で開拓地送りだ。上の連中にもこのことが報告されて、あいつらが今後どれだけ希望しようと、兵士になることはない」
足を組み、リヴァイは言葉を続ける。
「それと、怪我の具合も考慮してお前の次の壁外調査はなしになった。骨折が完治するまでに2、3ヶ月。その後になまった体を戻すとなると時間がかかる」
「……わかりました」
右腕を見下ろし、頷く。
骨折は訓練兵団のときに何度か経験したことがあった。治るのに時間がかかるのも、その後の体力戻しの苦労も理解している。
「壁外調査に行けないのは悔やまれますが……まずは治療に専念します」
「あぁ、そうしろ」
アリアもやっとなにがあったかを知ることができた。
整理された頭でほかに聞きたいことがあったな、と考える。リヴァイの顔を見つめ、「あっ」と声を出した。
「あの、紅茶の入った紙袋ってどこかに落ちてませんでした?」
紅茶だ。ベインとオトギに引っ張られたときに手放してしまったのだ。
見つからなかったらまた買いに行かなければならない。
「ハンジが拾った。これか?」
そう言ってリヴァイが手を伸ばしたのはベッドサイドのテーブルだった。
しわくちゃで汚れてしまっている紙袋をリヴァイが掴む。手渡され、アリアは中身を覗き込んだ。