第4章 自分の大切な人を心配させないように
「これは偶然でしょうか」
ゆっくりアリアは上半身を起こした。
「ベインと、オトギ……」
呟き、ナスヴェッターは「あぁ……」と小さな声で言った。両手で顔を覆う。
「いたよ、僕が整備室から出たのと入れ替わりであの2人も入って行った。そのときはなんとも思わなかったけど……まさか」
ぎり、とナスヴェッターは歯を食いしばった。
彼も上体を起こし、アリアと顔を見合わせた。
「僕も君もあの2人によく思われていない。そして僕たちは同じ立体機動装置への細工で死にかけた」
前髪の隙間から、怒りのこもった両目が見えた。
「これは偶然じゃない」
ベインとオトギはアリアとナスヴェッターに怪我を負わせる程度のことは考えていない。紛れもなく、殺す気だ。
生まれて初めて向けられた明確な殺意に腹の底から震えが走った。
「エルヴィン分隊長とキース団長に報告しておいたほうがいいかもしれない」
「えっ、で、でも……かもしれないと言うだけで、なにも証拠なんてありませんよ? そんなこと知らないと言われたらそれでおしまいなんじゃ」
「偶然が2つ重なったら、それはもう偶然じゃなくなる」
ナスヴェッターの初めて聞く力強い言葉に、アリアは黙った。
「わかりました」
そして頷いた。