第4章 自分の大切な人を心配させないように
立体機動装置を外し、ナスヴェッターは地面に大の字に寝転んだ。その隣でアリアも同じように倒れた。
疲労感が凄まじい。
何度も深呼吸を繰り返し、息が落ち着いてきたころ、アリアがようやく口を開いた。
「なにが、あったんですか」
「アンカーの噴出口になにかが詰まったんだと、思う。昨日整備したときはこんなの、なかったのに……」
険しい顔をして、ナスヴェッターは言う。
その言葉を聞きながら、アリアは空を見つめた。
アンカーの噴出口が両方同時に詰まることは珍しい。長い間立体機動装置を使っていなかったわけでもない。整備も昨日したと言う。
1羽の鳥がアリアの視界を横切った。
「……わたしにも以前同じようなことがありました」
ある仮説にぶち当たる。
前までのアリアならこんな考えすぐに捨てていたはずだ。
だが、今はそうではない。
「同じようなこと?」
「はい。訓練中に片方の噴出口が詰まったんです。危機一髪、リヴァイさんに助けていただいたので怪我もなかったんですけど……」
あのとき、アリアも前日に装備の点検はしていた。
噴出口に詰まりを感じたからだ。だがちょうどハンジに呼び出され、その点検は一時中断となった。
(でも、あのとき)
ハンジのもとへ行くと、彼女はアリアを呼んでいないと言った。
不思議に思いながらも整備を再開しようとしたとき、別の兵士に話しかけられたのだ。そのまま、長話に付き合わされ、結局整備をする時間はなくなり、次の日になった。
ハンジに呼ばれているとアリアに伝えてきた兵士。
そのときはわからなかったが、今ならわかる。
「オトギさんだった」
ひょろりと小柄な兵士。あれは間違いなくオトギだった。
「そして、わたしを途中で呼び止めたのは──」
人の良さそうな笑顔を浮かべた大柄な兵士。
「ベインさん」