第4章 自分の大切な人を心配させないように
「と言うわけでハンジさん! 紅茶について教えてください!」
「なるほど! 任せなさい!」
翌日。
アリアは朝食を終えると真っ直ぐにハンジの執務室に足を運んだ。
そしてこれまでの経緯を話した。
ベインとオトギのことは避け、リヴァイから紅茶が好きなことを聞き出した、と報告するとハンジは目を輝かせながら快諾してくれた。
「まさかあのリヴァイが自分のことを話すなんてね。やっぱりアリアには人を惹きつける魅力はあるんだろうか……」
「そんなことないと思いますけど……でもありがとうございます」
褒められて悪い気はしない。
アリアは微笑んだ。
「でもどうして紅茶で私のところに?」
朝から書類と睨めっこしていたハンジはそれを机の上に放り投げ、不思議そうに首を傾けた。
忙しいならまた出直すと言ったのだが、昨日から終わらない書類仕事にうんざりしていたらしいハンジはモブリットたちが訓練でいないことをいいことに、こうして話を聞いてくれている。
「ハンジさんの執務室、いつも紅茶のいい香りがするので詳しいんじゃないかって思って」
ぐるりと執務室を見渡して、ハンジは納得したように頷いた。
「モブリットの奴が紅茶が好きなんだよ。彼、紅茶を淹れるのが本当に上手でね、そういった来客対応は全部モブリットに任せてるんだ」
「そうだったんですか」
なんでもそつなくこなすモブリット。
エルヴィンも彼のことを褒めているのを聞いたことがある。
「じゃあモブリットさんが戻ってきたらまた来ます。お忙しいところすみませんでした」
「えっ! もう行くの!?」
立ち上がったアリアにハンジは素っ頓狂な声をあげた。
ガシッと強い力で腕を掴まれて気づくとアリアは再び、さっきまで座っていた椅子に腰掛けていた。
「あの、ハンジさん?」
「私も少しくらいなら紅茶についてわかるよ! 兵舎の近くの紅茶屋さんには私も行ったことがある!」
「な、なんでそんなに必死なんですか?」
「もうここに座って書類を読むのは嫌なんだ! 息抜きがしたい!」
「モブリットさんに怒られますよ!?」
「今モブリットは訓練中だ。しばらくは戻ってこない」
ギラギラとしたハンジの目に見つめられ、結局根負けした。