第4章 自分の大切な人を心配させないように
小さくなっていくナスヴェッターの背中を見送りながら、アリアは息を吐いた。
まさか自分にも危険が及ぶかもしれないなんて考えもしていなかった。
「油断するなよ」
気をつかうようなリヴァイの声にアリアは小さく頷く。
「部屋まで送る」
「いいんですか?」
「さっき言ったばかりだろう。1人になるのは危険だ」
さも当たり前のようにリヴァイは言う。
巻き込んでしまった罪悪感とリヴァイがついてきてくれる安心感にアリアは深く頭を下げた。
「ありがとうございます」
アリアが躊躇いがちに足を踏み出すと、リヴァイもそれに合わせるように歩き出した。
「そうだ、リヴァイさん」
沈黙が続くのも息苦しいな、と感じたアリアはふと思い出したことをリヴァイに聞こうと口を開けた。
「なんだ」
「好きなものとかってありますか?」
さんざん悩んでいるリヴァイへのプレゼント。
ちょうどいい機会だ。本人に聞いてしまうのが1番手っ取り早い。
リヴァイは突然の質問に瞬きを繰り返していたが、やがて抑揚のない声で言った。
「紅茶が好きだ」
「紅茶、ですか?」
「あぁ」
予想外の単語にアリアは思わず聞き返す。
リヴァイはそれに頷き、遠くを見るように視線を流した。
「ガキのとき、地上の裕福そうな人間から盗んだ物の中に紅茶の茶葉が入っていたことがあった」
どきり、とアリアの胸が鳴った。
リヴァイの小さいときの話だ。
少しでも彼のことが知りたくて、アリアは黙ってリヴァイの横顔を見つめる。
「育ての親に飲み方を教わって、生まれて初めて紅茶ってのを飲んだ。そんときは苦ぇってことしかわからなかったが、今になってつい飲んじまうようになった」
「そうだったんですね」
アリアは呟き、ニコリと笑った。
「教えてくださってありがとうございます」
リヴァイへのプレゼントがようやく決まった。