第4章 自分の大切な人を心配させないように
「アリア、お前も気をつけた方がいい」
厳しい顔のまま、リヴァイが言った。
ぽかんと口を開けてアリアはリヴァイを見る。なにを言われているのかよくわかっていない様子だ。
だがナスヴェッターにはリヴァイの言わんとしていることがよく理解できた。
「アリア。き、君は新兵でありながらベインが憧れていた第1分隊に入って、エ、エルヴィン分隊長にも気に入られている」
そこまで言って、アリアは小さく息を呑んだ。
「ま、まさか……わたしも、恨みを買っている可能性がある、と?」
「その可能性は十分ある。俺はあいつらのことをよく知らねぇが、常識なんて弁えてねぇってことはあの面を見ればわかった」
2人が去っていったほうを睨みつけ、吐き捨てるようにリヴァイは言った。
ようやく理解したのか、アリアは目を見開き、怯えたように腕をさすっている。
ナスヴェッターは唾を飲み込み、アリアを見た。
「アリアが巻き込まれる前に、なんとか話をつけてみるよ。き、君を巻き込むわけにはいかない」
悪いのはほとんど、というか全てベインだが、本人は自分の気に入らない人間を傷つけることを悪だとは思っていない。そんな人間にアリアを近づけるわけにはいかない。
「ナスヴェッターさんだけにあの人たちを押し付けるわけにはいきません。なるべく2人には関わらないようにしますし、なにか違和感があればすぐに上官に報告します」
しかし、アリアはキッパリと首を横に振った。
「なるべく1人にならないほうがいい。できる限り複数人で行動するか、人の多いところにいろ。無防備に突っ立ってたら格好の的にされるぞ」
言葉はきついが、リヴァイもここで無責任に放り出すわけにはいかないと思ったのだろう。的確なアドバイスだ。
アリアとナスヴェッターはリヴァイの言葉に頷いた。
「じ、じゃあ、僕はもう戻ります。アリア、リヴァイさん、助けてくれてありがとうございました」
「気をつけてくださいね」
「あ、あぁ。アリアも」
まだ不安は残るが、ベインとオトギに脅されているという事実をだれかに知ってもらえただけで、ナスヴェッターの心はとても軽くなっていた。