第4章 自分の大切な人を心配させないように
「……ちっ、仕方ねぇな。行くぞ、オトギ」
「ッス。…………ゴロツキ風情が」
ベインとオトギは忌々しそうにリヴァイを睨みつけ、そそくさといなくなっていった。
「ふー……よかった……」
「これでいいのか?」
「はい! ありがとうございます!」
ナスヴェッターは事情が飲み込めず、ぽかんと口を開ける。
地下街からやって来たという、近寄り難い雰囲気の男とアリアは親しそうに喋っていた。
アリアがナスヴェッターに話しかけたのも、リヴァイがあそこで腕を組んで立っていたのも、すべて最初から二人の間で計画されていたことなのだろうか。
「ナスヴェッター、と言ったか」
ナスヴェッターは突然リヴァイに話しかけられ、思わず背筋を正した。
「あいつらとはどういう関係だ。なんの話をしていた?」
鋭い三白眼に見つめられると、いつもより上手く声が出なくなる。
それでもナスヴェッターはつっかえながらも言った。
「小柄なほう――オトギとは同期です。た、たまに話すくらいで、調査兵団に入ってからは所属班が違うこともあり、は、話さなくなりました。そ、それと、大柄なほうの、ベインさんはぼ、僕より二つ上の先輩です」
ちゃんと喋れと叱られたらどうしよう、と怖々リヴァイを見る。しかし、彼はふんふんと頷きながらナスヴェッターの言葉を待っていた。
それに安心し、ナスヴェッターは続けた。
「ベインさんとは、さ、さっきのが初めての会話、でした。……それで、会話の内容、ですが……その、二人は僕のことを鬱陶しがっているような、気がしました」
「鬱陶しがっている? ナスヴェッターさんを?」
驚いたように聞くアリアに、ナスヴェッターは頷く。
「あ、あくまでも推測、だけど……ベインさんは第1分隊に入りたかったらしい。でも、最初に配属されたのが、第1分隊じゃなかったから、それで、たぶんやっかみだ」
「自分よりも先に第1分隊に入っていたナスヴェッターさんに嫉妬して、あんな絡んでたんですか!?」
「う、うん、たぶんね」
リヴァイの目がスっと細くなった。