第4章 自分の大切な人を心配させないように
「ナスヴェッターさん!」
どうやってここを抜けだそうと考えていたナスヴェッターは突然聞こえてきた明るい声にパッと顔を上げた。
ベインとオトギの肩の向こうにアリアの姿が見えた。
「お話中失礼します。エルヴィン分隊長が至急ナスヴェッターさんに話したいことがあるとおっしゃっていました!」
分隊長から伝言を頼まれただけにしては、妙に表情の硬いアリアに違和感を覚える。
しかし、エルヴィンからの呼び出しならば行かなくてはならない。ベインもオトギも解放してくれるだろう。
「ちょっと待ってくれ、アリア」
真っ先に口を開いたのはベインだ。
「俺たちもさっき分隊長に会ったが、そんな素振りは見せてなかったぜ?」
「お2人に会った後に話すことができたのではないですか?」
拳を握り、言い返すアリアを見ているうちに、ナスヴェッターはあることに気づいた。
(……アリアは嘘をついてる?)
エルヴィンの呼び出しだとでまかせを言って、自分をここから逃してくれようとしているのではないか。
ナスヴェッターは今すぐ逃げろ、と言いたいのをぐっと堪えた。
このままアリアがここで粘り続けたらベインたちに目をつけられるかもしれない。しかし、ここでアリアを帰してしまったらもう二度と逃げるチャンスがなくなってしまう。
揺れる心に合わせて視線も泳ぐ。
泳いだ先で、彼を見つけた。
「と、とにかく! お話はまた今度にしていただけませんか? 分隊長もかなり急いでいたようなので」
「そう言われてもなァ……」
「べ、ベイン、さん」
ヘラヘラと笑い、黙っていたオトギが小さい声でベインの名を呼んだ。
「あ?」
あれ、とオトギの指さす彼を見た途端ベインはサッと顔を青くした。
そこには腕を組み、首を軽く傾け、こちらをじっと見つめるリヴァイがいたのだ。