第4章 自分の大切な人を心配させないように
「嘘はよくねーって、ナスヴェッター」
「そうそう。オレらの仲じゃないっスか、ナスヴェッターくん」
「だ、だから……嘘なんて」
なんの話をしているのだろうか。
途中から聞いたせいで話の内容が掴めない。だが、ナスヴェッターが困っているのはたしかだ。
(それとなく話しかけてナスヴェッターさんを助ける……?)
そんな考えがアリアの脳裏をよぎる。
しかし踏み出せないのはやはりミケから聞いたあの噂のせいだった。
アリアも対人格闘には自信があるが、体格差のありすぎるベインが相手になったとしたら、負ける可能性のほうが高い。
もし今ナスヴェッターを助け、ベインに目をつけられたら……?
調査兵団をやめるなんてこと、絶対にしたくない。
(でも……)
アリアは息を吸って、リヴァイを振り返った。
「リヴァイさん、わたし、ナスヴェッターさんにそれとなーく話しかけてきます」
「助けるのか」
「はい。わたしは以前の壁外調査でナスヴェッターさんに助けてもらいました。それなのにわたしが彼を助けないわけにはいきません」
ふんす、と意気込むアリアを、リヴァイは物珍しいものでも見るかのような目で見た。
「そ、それでお願いなのですが……」
手を合わせて、アリアは言った。
「わたしの後ろに立っていてくれませんか?」
「……は?」
「だ、だって、わたしが話しかけても断られるかもしれないじゃないですか! そんなときにリヴァイさんが後ろで腕組んで立ってたら絶対2人もいなくなるはずです!」
「…………」
「お、お願いします!!」
リヴァイの目線がアリア、ナスヴェッター、アリアに戻る。
やがて、ため息が彼の口から吐き出された。
「いいだろう」