第4章 自分の大切な人を心配させないように
と、思っていました。数分前までは。
「だ、だから、僕はなにもしてなくて……」
立体機動装置の整備でもしようと自室に戻ろうとしていたアリアは咄嗟に物陰に身を潜めた。
廊下の曲がり角から覗くと、そこにはいつも以上にオドオドしたナスヴェッターとさっきまで話していた男たち、ベインとオトギがいたのだ。
なにも気にせず前を通り過ぎればよかったのだが、どうしてもよくない噂というのが頭をよぎり、その勇気が出なかった。
まるで盗み聞きするような体勢でいるところをだれかに見られたらきっと面倒なことになる。迂回して帰るしか――
「なにやってる」
「わッ!」
突然背後からかけられた声にアリアは出かかった叫び声をなんとか押し込める。
そろり、と後ろを見ると、訝しげな顔をしたリヴァイが立っていた。
「り、リヴァイさん、こんにちは」
「あぁ」
頷き返すリヴァイは、なにを見ているんだ、と言うようにアリアの視線の先を追った。
なにも先入観のない人間から見たら、3人が話しているだけのように見えるだろう。
なんと説明するべきか……。
「……あいつらは?」
「え、えっと、3人ともわたしの所属する分隊の人たちです」
「そうか……」
じっとベインとオトギを見ていたリヴァイは、やがて気に食わなさそうに眉間にシワを寄せた。
「胡散くせぇ奴らだな。あいつら」
「……と、言いますと?」
「へらへら笑っちゃあいるが、どうせ腹の底でろくでもねぇこと考えてんだろう。あんな奴らを今まで腐るほど目にしてきた」
つまりリヴァイは初見でベインの本性を見抜いたのか。
アリアは内心舌を巻きつつ、再び3人に目線をやった。