第4章 自分の大切な人を心配させないように
ぱちぱちとアリアは目を瞬かせた。
「初めまして、俺はベインだ」
「オレはオトギって言うっす! よろしくね、アリアちゃん」
休暇を存分に楽しみ、兵舎に帰ってきた翌日。
エルヴィンに呼び出されたアリアは、執務室にいた新たな仲間に挨拶されていた。
「あ、えっと、アリア・アルレルトです。よろしくお願いします」
慌ててアリアは名を名乗り、奥で座っているエルヴィンに目線を送った。
「彼らはミケの班からやって来た2人だ。さすがに第1分隊も3人だけでやっていくわけにはいかない。彼らも次回の壁外調査に私たちと同じ分隊で戦ってもらう」
「そうだったんですね。了解いたしました。ところで分隊長。次の壁外調査の予定というのは……?」
なんだか優しそうな2人に安心しつつ、アリアは首を傾げた。
アリアの問いにエルヴィンはまるでそう聞かれることを予期していたかのように淀みなく答えた。
「前回の壁外調査で我々は大多数の兵士を失った。新兵への再教育期間と壁外調査費用が落とされるのも考慮し、3ヶ月後に行うことになった」
3ヶ月後。
きっと夏は終わりを迎えてくるころだろう。
冬には壁外調査は行われない。寒さのせいで兵士の動きが鈍るからだ。
となると、次の壁外調査が今年で最後か、残り1回だけとなる。
「了解です」
生きて今年を終えられるといいのだが。
アリアはふとそんなことを思いながら、エルヴィンとベイン、それからオトギに会釈した。
「失礼します」
エルヴィンの呼び出し内容は以上だ。
アリアはこれからあることをハンジに聞きに行こうとしていた。
「やぁ、アリア! 休暇は楽しめたかい?」
ひょこっとハンジの執務室に顔を覗かせると、ちょうどよく彼女はモブリットとニファと共にお茶をしているところだった。