第17章 殺したくてたまらないという顔
リヴァイは軽く頷きながら「それで?」と聞き返した。
「壁の外のことを知った人間は中央憲兵に殺されるんです。秘密裏に」
リヴァイの目がアリアに向いた。
アリアは一瞬言葉を途切らせ、しかしふっと息を吸い込んだ。
「わたしの両親が殺された理由もおそらくそれだろうって、最近気づいて。イェーガー先生が王都で行方不明って聞いたときにもしかしてって思ったんです」
エルヴィンの父親の話はしなかった。リヴァイは口がかたい人間だから話したところで問題はないだろうが、何よりエルヴィン本人がリヴァイに話していないのなら何も言わない方がいいと思った。
エルヴィンは微笑んだまま紅茶を飲んだ。
「だから、エルヴィン団長はイェーガー家の地下室に先生が知っている壁の外の情報が隠されているとお考えなんですよね?」
咳払いをして改めてエルヴィンを見る。彼は「そうだ」と頷いた。
「ウォール・マリアを奪還した暁にはその地下室に行き、この世界の謎を明らかにする」
その瞬間、エルヴィンの瞳の中に不思議な光が宿るのをアリアは見た。それはすぐさま消え去ったが、決して見間違いではない。
アリアの視線に何を感じ取ったのか、彼は淡く微笑んだ。
「人類のために」
唇を薄く開く。息を吐き出す。
「えぇ、もちろん。人類のために」
自分自身を落ち着かせるために膝の上で組んだ手をぎゅっと握りしめる。
「アリアは地下室に入ったことがあるのか?」
その一連の流れをリヴァイが気づかないはずがない。エルヴィンとアリアの間に奇妙に繋がった“何か”に。
だが、彼は何も触れなかった。
「一度だけ、好奇心を抑えられなくて。隅々まで見たわけではありませんが……ごく普通の仕事部屋という印象でした」
「まぁ、そうだろうな。隠したいものを隠さねぇなら隠している意味がない」
「なんだか謎かけみたい」
「あ?」
「いえ」
ふふっ、とアリアは笑みをこぼし、最後のチョコレートを口に放り込んだ。