第4章 自分の大切な人を心配させないように
その一言に、アリアは息を詰まらせた。
ただ頷くだけなのに、それができなかった。
調査兵団の兵士に「また明日」はない。
「死なない」と約束することはできない。
だからアリアは――
「ありがとう」
そう言うことしかできなかった。
「姉さん! ミカサが!!」
アルミンの切羽詰まった声にアリアは我に返った。
ハンネスの手が頭からどき、アリアはアルミンの元に駆け寄る。
さっきまで駐屯兵団兵士に捕まえられていたミカサがどこにもいない。
「事情を話してわかってもらえたんだけど、兵士がいなくなった途端にミカサがエレンが行ったほうに飛び出して行っちゃったんだ!」
「いじめっ子たちが大変!」
「そうなんだ……!」
いつものミカサなら冷静に対処してくれるだろうが、エレンに置いていかれてしまった彼女はかなり恐ろしい。
あの状態になったミカサと相対したいじめっ子たちが無事に済むはずがない。
アリアとアルミンはハンネスに手を振り、ミカサを追いかけた。
「エレン! 大丈夫!?」
走ってすぐの裏路地に2人はいた。
周りには気絶したいじめっ子たちが転がっている。
やっぱり無事では済まなかった……。
エレンはさっきよりずっと怪我を増やし、地面に座り込んでいて、ミカサはそんなエレンのそばで、心配そうに、どこか怒っているように立っていた。