第12章 予定外の連続
ベルモットのような変装はまだできないし、キャンティ達ほど狙撃の精度も高くない……拳銃は別だけど。キュラソーのような特殊な能力もないし、アイリッシュほど物事の判断を的確にはできない。ジンやウォッカのように取引を有利に進めるのも苦手だ。
「でも、それだけ認められてるってことだろ」
『……だといいんだけど』
自分に自信はない。ラムは優秀だと言ってくれたけど、この組織に来て自分の能力の低さを実感したから。
「あんまり自分を卑下しすぎるなよ」
スコッチはそう言って視線を戻した。取引はスムーズにいっているだろうか。
……なにかおかしい。通信機を起動させるがバーボンだけ繋がらない。
「どうした?」
スコッチが心配そうに聞いてくる。それに答えずバーボンの携帯に電話をかける。バーボンがズボンのポケットに手を入れた。そのまま通話状態になる。
「……話が違うじゃありませんか」
「我々の要求を飲めないと言うのかね?」
「それは僕に判断できることではありません。ですから確認を……」
「そう言って助けを呼ぶつもりか?」
「まさか。仮に呼んだとしても着く前に僕が殺されるでしょう?」
……相手組織の裏切り。全く舐められたものだ。通信機に向かって言った。
『あの場所から逃げようとするヤツがいたら撃って。殺さなくていい。責任は私がとる』
「おい、あそこに行く気か?何人いると……」
スコッチの静止も聞かず走り出した。通話は続いたまま。
「僕を殺せば組織が黙っていませんよ」
「君1人の死体くらい簡単に隠せるさ」
「そうでしょうか?」
「その余裕いつまで続くか見ものだな」
『その言葉そのまま返すわ』
私に気づいたバーボンは口角を上げた。こうなることを呼んでたな……後で覚えとけよ。
「な、な、なんでお前が……」
『以前の取引の時は世話になったけど、それも今日で終わりね……いつもの男じゃなくて油断した?』
前にも取引した相手だというのは聞いていた。顔を見て思い出したけど、ジンと一緒に会った記憶がある。
「くっ……殺せっ!」
その一言で周囲のヤツらが一気に動き出す。でも、どこか怯えているのはすぐにわかる。
『そんなので殺せるわけないでしょ』
拳銃を抜き数人の肩口を狙って続けざまに3発。掠らせただけなのに当たったヤツは悲鳴をあげてのたうち回る。