第11章 理由なんてないわ
「っ!誰だ貴様!」
中には男が数人と女の子が2人。蘭と園子という子で間違いなさそうだ。手を縛られ、口も塞がれている。2人の目には涙が浮かんでいる。
それを見てプチンと頭の中で何かが切れた。
『……クズどもが』
ナイフや拳銃を持ってはいるが、普段から扱っている様子ではなく、ただ脅しの為だろう。構え方も無様だ。
隙をついて部屋へ踏み込む。
「……やっちまえ!」
その声で男たちが動き出すが、大したことない。一撃ずつお見舞いしただけで気絶していく。組織の末端のヤツらのほうがまだ骨がある。
「ひいっ……!」
1人残った男に近づく。
『その子達、離してくれない?』
「くっ、来るなっ!こいつがどうなってもいいのかっ!」
女の子へ銃口を向ける。
『そんな玩具で何ができるの』
「なっ……」
拳銃は全て弾の入っていないレプリカ。男達が倒れた時にした音でわかった。
「やっ……やめっ……!」
逃げようとする男のこめかみに膝で一撃。呆気なく倒してしまった。なんだ、私たちがわざわざ相手にする連中ではないじゃないか。
『もういいよ』
後ろに隠れた男の子に声をかける。するとものすごい勢いで2人の元に駆け寄る。私も膝をついて手と口の拘束を解いた。
「こわかったあ……」
そう言って泣き出す2人。
『無事でよかったね』
「お姉さん、本当にありがとう……」
男の子も泣きそうだ。
『歩けそうかな?会場に戻ろう』
女の子の背中を押す。本来なら警察をこの場で呼ぶべきなのだろうが、立場上そうもいかない。
『君、会場に着いたらご両親に警察に連絡するように伝えてね』
「……新一」
『え?』
「僕の名前、新一っていうから……」
『わかった。新一君、お願いできる?』
「うん!」
「お姉さん、助けてくれてありがとう。私、蘭!」
「私は園子っていうの!」
『蘭ちゃんと園子ちゃんね。警察の人が来たらお話できる?ちょっと怖いかもしれないけど……』
「うん!大丈夫だよ!」
よかった。涙も引いたようで笑顔が見える。
『さあ、もう着いたね。急いでご両親探して』
扉が開いたのを確認して3人から離れた。
外に出てバーボンの車を見つける。
「全く貴女は……」
『そう言いながらも従ってくれて助かったわ』
「それで……何があったんですか?」