第11章 理由なんてないわ
家族なんて私には縁がないもの。それでもちょっと羨ましい……なんて。
「……例の組織が潜んでいるか、しばらく様子を見ましょう」
バーボンに言われて彼らから目を離した。
『別で動いた方が効率いいわよね?』
「そう言うならそれで構いませんよ」
『じゃあそれで。何かあったら連絡して』
その場でバーボンと別れた。
それから時間が経つけど会場内の動きはない。外も確認しようか……メイクを直したいし。そう思ってトイレへ向かった。
トイレから出ると誰かとぶつかった。
『あ、ごめんね。大丈夫?』
さっきの男の子だ。それにしても随分慌てた様子だ。
「僕こそごめんなさい!あ、お姉さん女の子達見なかった?」
『女の子?』
「そう、一緒に来た子なんだけど姿が見えなくて……電話も出ないし」
嫌な考えが頭を過ぎった。
『お父さんやお母さんには聞いたの?』
「うん、でも見てないって」
これはまずいかもしれない。
「引き止めちゃってごめんなさい、ありがとう」
『一緒に探させて』
そのまま去ろうとする男の子に向けて言う。
「え、でも……」
『大丈夫。その子達のこと教えてくれない?』
「……名前が蘭と園子。髪が長い子とカチューシャつけてる子だよ!」
やっぱりさっき見た子達か。
『わかったわ。貴方は会場に戻って……』
「ヤダ!一緒に探す!」
『……もし、悪い奴らに捕まったりしてたら危ないわ』
「でもっ……!」
これは引いてくれないか。危険だけど、その場で本人達か確認もしたいし……。
『それじゃあ、約束してくれる?』
「何?」
『私より前に出ないで。お友達を見つけても、私がいいって言うまで後ろにいて』
「……わかった」
『ちょっと待ってね、知り合いに連絡だけいれるから』
バーボンへ電話をかける。
「はい」
『作戦変更。私が現場を抑えるから、貴方は車を近くにつけて待ってて』
「へっ……あっ」
何か言われる前に電話を切る。電話が震えているけど無視。
『ごめんね、行こっか』
「うん!」
事前に調べた館内の地図を思い出しながら進む。取引が行われそうな場所は……3箇所。
『ちょっと走るよ』
「大丈夫!」
たどり着いた1つ目の部屋。直感でここが当たりだとわかった。
『少し離れて』
男の子の姿を確認して思いっきりドアを蹴破った。