第108章 カイピリーニャは甘すぎる #2 ※
頬に添えられた手をパシッと弾く。ピンガは一瞬きょとんとした顔を浮かべて、すぐにクツクツと笑いだした。
「あー、お前本当面白いわ」
『……て事は冗談?』
「いや、本気だけど?どんな顔して抱かれるてるか自覚ねぇの?」
『あるわけないでしょ!馬鹿!』
感情に任せて近くにあった枕を投げたが軽々と受け止められた。なんとなく顔が熱い気がする。
「まずはセフレでも構わねぇよ。考えとけ」
そう言ったピンガが投げて来たものがベッドの上に転がる。薬……おそらくアフターピルと水の入ったペットボトル。
『まずはって……』
「いずれ俺の物になったら最高」
『そんな事絶対ないから』
ピンガをじろりと睨んで薬を口に入れて飲み込んだ。一息ついてシャワーを借りようと立ち上がる……つもりだったが、体に力が入らなくてふらついてしまう。
「何してんだ」
『シャワー浴びたいの……』
「その状態で?」
『……別に。酷くされた後はいつもこんな感じ』
ジンに意識が飛ぶまで抱かれれば目が覚めてもすぐには動けないし、今より酷い状態の事もある。ふらふらするがゆっくりなら動けない事もない。
『ちょ、えっ?!』
どう動こうか考えていると、ピンガによって横抱きにされた。掛けられていたブランケットが下に落ちる。
『何?!おろして!』
「そんな状態で倒れたらどうすんだよ」
『大丈夫だから!』
「手伝ってやる……んな顔すんな。何もしねぇよ」
そのまま抵抗虚しく、ピンガにシャワールームへ連れられて行った。
言われた通り、ただ手伝ってくれるだけだった。むしろ丁寧に洗われて何とも言えない気持ちになる。怪我を覆っていた包帯も綺麗に巻き直された。もうほとんど痛みはないのだが。
こんな扱いジンにはされた事ない。それを求めてるわけじゃないけど、それでも若干気持ちが沈む。
全身綺麗にしてもらってシャワールームを後にしてからも、甲斐甲斐しく世話される。髪を乾かされながら鏡越しにピンガを見上げる。
「何」
『別に』
「で、受け入れる気になったか」
『まだ言ってるの』
「諦める気はねぇよ」
ドライヤーの音が止み鏡越しに見つめられる。
「本気だぜ、俺は」
『……そう』
目を逸らしながら呟くようにして答えた。立ち上がろうとしたが、肩を抑えられてそれを拒まれる。
「帰んの?」