第108章 カイピリーニャは甘すぎる #2 ※
渋々通信機を耳に付けたピンガ。女の姿で疲れるだろうし、気を張り続けるのも大変だろう。できるだけ早めに切り上げられるように頑張るしかないか。
会場の入口で招待状を見せ中に入る。さっさと歩き出そうとしたピンガの腕を取って引き止めた。
『2時間はかからないと思うから。終わったら連絡するからこの辺りまで来て』
「ええ」
『それと飲み食いは好きにしていいけどハメ外し過ぎないようにね』
「……チッ」
そんな事するわけないだろとばかりに、ピンガは一瞬だけ素に戻って小さく舌打ちをした。
『じゃあ、また後で』
その場所で一度ピンガと分かれ、会場の中心の方へと足を進めた。
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引き攣りそうになる頬と気を抜いたら出そうなため息をどうにか抑え、その場を離れる。
これといった収穫がない。知った顔を見つけて声をかけ、それとなく情報を引き出したがプラスになりそうなものはほとんどなかった。
それだけならまだしも、頼んでもいない見合い話を出されて本当に困った。上を通して、と何度言った事か。まあ、通されたところで受ける気はない。私は、ジンの隣にいたい。その関係が恋人である事は望まないし、利用されるだけで構わないから……なんて本人には絶対言えないけど。
時計を確認すると、思ったより時間が経ってる。ピンガの方は何か収穫があるといいんだが……そう思いながら通信機に声をかけるも反応がない。誰かと話してるのだろうか。さすがに通信機だけじゃ居場所まではわからないから、会場内を縫うように歩いていく。
『……あ、いた』
ピンガは会場の隅の方にいた……数人の男に囲まれて。ピンガにした変装、結構美人だし無理もないかも。遠目から見てもピンガは殺気立ってるのがわかった。マスクしてるからわからないが、きっとこめかみに青筋が浮いてる事だろう。それに気づかない周りの男達……平和ボケしてるんだろうな。あ、ピンガと目が合った。これは行かないとまずいな。
『待たせてごめんなさい』
ピンガにそう声をかけると周りの男達の視線も私に向く。すると私にも男達が誘いの声をかけてきた。気安く触れてくるし、これはストレスが溜まる。面倒な事に適当にあしらうだけでは引かなそうだ。仕方ない。
ピンガに近づいてそっと顎をすくう。そして、口元を隠すようにして顔を近づけた。突然で驚いたようでピンガの肩が大袈裟に震えた。