第107章 カイピリーニャは甘すぎる #1
『ふ、ぁ……』
何度目かわからない、噛み殺せなかったあくび。目尻に浮かんだ涙を指先でそっと拭う。
予定通りというか、昨日の任務後ジンにめちゃくちゃに抱かれて、解放されたのは今日、日がのぼり始める頃。身体はかなりだるいし眠い。ピンガとの約束の時間までは余裕があったから寝る事はできたが、それでもだるいし眠い。
ジンも楽しそうにしてた気がするし私も上書きしてもらえたし、そこは良かったんだけどね。
『……行くか』
ぐっ、と上に伸びをしてピンガの待つ部屋へ向かった。
先日と同じように鍵だけ開けられたドアにため息をつきつつも、部屋の中へ入る。そして、ピンガの姿を見て、私の口がぽかんと開いたのがわかった。
長めの金髪をハーフアップにしていた。それがコーンロウという髪型に変わっている。
『あー……結構なイメチェンね?』
「お前がどうにかしろって言ったんだろ」
確かにそんな話もしたけど……でも、コーンロウならわざわざ髪のまとめ方を教える必要もなさそうだ。ただ、チンピラっぽさは増した気がする。本人には言わないけど。
変装道具を取り出してピンガに向き直る。
『それじゃあやりましょうか』
簡単なメイクから変装マスクの作り方まで教えていく。この間のキスの事があったから警戒していたけど、変に気まづくなる事もなくて少し安心した。
『ところで潜入で使う変装はどうするの?』
「……女の格好で入るならどうすりゃいい」
『え?そうね……メイクは今教えたからいいとして……振る舞いも覚えなきゃ。あとその声も』
「は?」
『当たり前でしょ。女性はそんなに足開いて座らないし、声もそんなに低くない。服は……オーダーメイドかしら?』
「……」
『まぁ、無理はしなくていいんじゃない?』
「……お前は男の真似できるのかよ」
『できるわよ……あー、こんな感じか?』
ピンガの声に似せたものを発すれば、ピンガはぴくりと眉を上げた。
『大変かもしれないけど慣れれば簡単よ』
「わかったからその声で話すな。気持ち悪ぃ」
『失礼ね』
地声に戻してピンガを軽く睨む。変声機の提案もしようかと思ったけど、プライドが高そうだしやると言ったら聞かなそうだ。
『一通り教えるからまた今度様子見させて。それで良さそうならそこで終わり』
「……ああ」