第107章 カイピリーニャは甘すぎる #1
ピンガの顎をすくっていた手を思いっきり払いのけられた。ピンガは舌打ちをして顔を背けてしまう。まぁ、断りを入れたとは言え不躾に触れてしまったのも事実。ぼんやりと痛む手とピンガを交互に見て……その耳がほんのり赤くなっている事に気づいた。
『……ずいぶんウブな反応するのね』
「あぁ?!」
『まだそういう経験はないのかしら?だったら悪い事したわね』
「は、っ……んなわけねぇだろバーカ!」
『……ふっ、ふふ』
必死で反抗してくる様子も相まって笑いが漏れてしまう。ピンガに睨まれるが、顔まで赤くしてるから面白くて仕方ない。大きく深呼吸をしてどうにか笑いを落ち着かせて、もう一度ピンガに向き合った。
『ふぅ……ごめんなさい』
「……うぜぇ」
『まあまあ。ところで貴方女装する気ある?』
「はぁ?!」
『何言われてもとりあえず1回はやらせてもらうけど』
「な、なんで女装なんかしなきゃいけねぇんだよっ?!男のままでいいだろうがっ?!」
『貴方が気に入らなかったらそっちも考えるわ。ほら、大人しくして』
「冗談じゃねぇ」
立ち上がって距離を取ったピンガ。当たり前の反応かもしれないけど、こちらは頼まれて来てるのだから従ってもらわないと困る。さて、どうしたものか。
『からかたっのは謝るから。さっさとやりましょ』
「……」
『長期の潜入で、しかも性別を偽るなんて大変かもしれないけど……でも、もしそれを成功させたら株上がるじゃない』
「……」
『ラムに気に入られてるんでしょ?もっといいポジションに上がれるかもしれないわ』
ピンガはちらりとこちらに視線を向けて、その後大きくため息をついた。そして先程と同じようにベッドに座る。
「変なメイクしたら殺す」
『ベルモットにはまだ及ばないけど、そこそこ腕はいいつもりよ……と言っても、貴方可愛い顔してるからそこまでいじるつもりもないわ』
「……てめぇ、また馬鹿にしてんのか」
『違うわ。本心よ』
この前はサングラスをしてたからよくわからなかったけど……タレ目だしまつ毛も長い。唇も厚くてリップの色が映えそう。肌も綺麗。体格も華奢だから日本人は無理があるかもしれないけど、服装次第では外国人の女と言えば問題なく通せそう。
簡単なメイクとウィッグ、眼鏡で輪郭を隠せば……
『OK。見てみて』