第106章 3年前の11月6日
10/31―
数日前からバーボンと連絡が取れなくなっている。メールも電話も応答がないし折り返しも来ない。そのせいでジンの機嫌が悪くなる一方だ。どこで何をしているのか、なんて思いながらテレビを見ていると急に画面が切り替わった。
『この女……』
テレビに大きく映し出されているのは3年前にやり合った外国人の女だった。内容を聞く限り、どうやらこの女が例の爆弾魔プラーミャらしい。
「この女がプラーミャだと知ってたのか?」
『いや、知らなかったけど。3年前にやり合ったのこの女だった。ほら、あの時の……』
そう言うとジンも思い出したようだ。更に不機嫌になったのを感じて視線をテレビに戻す。
まさか、これ程までの悪人だったとは。あの時意地でも追って消しておくべきだったかもしれない。世界規模の殺し屋だ。日本だけでなく、世界中の警察組織が情報を得るだろう。しばらくの間裏社会がかなり荒れそうだ。
映像が変わった。渋谷のスクランブル交差点周辺には緑色の液体と、中央には白い大きな……模様からしてあれはサッカーボールだろうか。大きなサッカーボールは、東都水族館の一件でも見た。ということは。
『……もしかして』
ジンに聞こえないくらいの声で呟いた。
何かしらの事件があって、あの少年も関わっているのだろう。しかし、プラーミャの事は民間人が知っていていいような事じゃない。それなら、どこから情報を入手し逮捕するまでに至ったのか。警察があの少年に頼った可能性を考えて思わず鼻から笑いが漏れた。まあ、FBIも何度か頼っているみたいだし。
にしても、世界規模で活動する殺し屋もあの少年には勝てなかったのか。本当に末恐ろしい少年だ。いずれ私達も……そんな事を考えながらテレビを消した。
そして、翌日。やっと連絡がついたバーボンがアジトに来た。不機嫌な様子を一切隠さないジンとそれを平然と受け流すバーボン。
それをどうにか仲裁したものの、なぜ連絡ができなかったのかははぐらかされてしまった。答えてもらえないのはわかりきっていたが。
そして、早速私とバーボンで取引に向かう。
『足引っ張らないでよ』
「僕がミスするとでも?」
『怪我してるでしょ。動きがぎこちないもの』
「このくらい大した事ありませんよ」
『そう』
この男の正体を知ってしまったからには……きっとこんな会話もあと数回。