第106章 3年前の11月6日
『……こんな感じ?』
いつもの変装とも違う顔を鏡に写し確認する。ブラウンのボブヘアーに若干のタレ目。ガラッと雰囲気を変えてみたが……これに合う服はあっただろうか。
顔を隠して外に出る事が多くなったせいで、素顔で出歩くのは落ち着かない。それに、ベルモットに教えられた変装技術の練習にもなるし、プライベートの時は顔を変えている。まあ、いつもの変装に慣れてしまったから無意識にその顔にしてしまう事が多いのだけど。
身支度を整えて部屋を出る。今日の目的地は渋谷近くだ。
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行きたいお店にも行けたし必要な物も揃えた。それまではいいのだが、雲行きがなんとも怪しくなってきた。雨は降らない予報だったけど、微妙な天気だ。どこかのカフェでジンからの連絡を待とうか……なんて考えながら歩き出した。
ドオォォン!
『な、なに……?』
急に聞こえた爆発音に足を止めた。それは、私だけじゃないみたいで周囲の人間も辺りを見回している。
こんな世界に身を置いているが故なのだろうか。私は爆発音が聞こえた方向に向けて歩き出した。
「ねぇ、この近くのビルでガス漏れだって!」
「うわ、やばいじゃん!」
途中、すれ違った何人かがそんな会話をしていた。
ガス漏れが原因の爆発かとも考えたが、消防車のサイレンは聞こえないし……それとこれとは別の事件なのだろうか。
足を進めていくと、廃れたビルが立ち並ぶ場所についた。
『ん……?』
ビルとビルの間。地面とビルの壁についていた赤に気がついた。見た感じ、つい先程ついたもののようだ。この先に誰か怪我人がいるのかもしれない。そう思って、ビルの間を進んでいった。
そして、しばらく進んだ先でうずくまっている人を見つけた。
『あの、大丈夫ですか?』
そう声をかけるとその人は顔を上げた。女か……金髪に青い目。どこの国の人だろうか。
『"どこの国の人?怪我してるの?"』
とりあえず英語で話しかける。が、返事はない。
『"手当てしてあげるから。応急処置だけど"』
そう伝えて先程買ったものを取り出した。偶然だか運が良かった。車の中に置いてあるガーゼと包帯がなくなるところだったのだ。見ず知らずの女ではあるが、この程度譲ったところで問題はない。また買い直す手間はあるけども。
そうして、近づこうと顔を上げた時。目の前に脚が迫っていた。